個人事業主が利用できるローンは事業用か生計用かで扱いが変わる

歴史の授業で、「士農工商」という身分制度を学習した記憶はありませんか?「武士」→「農民」→「工業(職人)」→「商人」の順で身分が高いものだと建前上は言われていたことを指しています。しかし、儲かっている商人のところへ俸給の少ない武士がお金を借りにきたりなど、実質ではこの順番ではなかったことが容易に想像できます。

現代では、職業による身分の上下はありません。強いて言うなら、国家公務員法のように「国家公務員は国民全体の奉仕者」といった役割を示すことがあるくらいでしょうか。しかし、融資の世界となると、状況はちょっと変わってきまして…。

銀行にしてもサラ金にしても、クレジットカード会社にしても、借りやすい人と借り難い人がいるのは現実あることで、公務員や医師、会社役員などは有利、正社員→非正規雇用→個人事業主といった順番で審査が厳しくなっていくことは皆さんもご存知でしょう。個人事業はどうしても安定した収入の継続に疑問を持たれたり、事業者個人の健康や都合で経営状態が急激に変化する危険もあるため、一定の給料を約束されているお勤めよりも不安定と判断されてしまうのは仕方のないことかもしれません。

では、個人事業主は冷遇されているだけなのかというと、決してそうではありません。上に書いた借り入れの優位は、あくまで「個人を対象にした貸付」についてのものです。個人の収入と信用を問題にしているこの融資とは別に、個人事業者向けの「事業用ローン」というものも数多く存在していて、事業や生活資金として幅広く利用可能な融資をしてもらえるチャンスがあります。

サラ金などの貸金業者が個人に対して貸付できる金額は、年収の3分の1までと決められています。これは1社ごとに3分の1というのではなく、全社合計でということなので、お給料の総額(税金などを引かれる前の額)に応じて借りれる額は決められていきます。

それに対し、事業用ローンは、銀行でもサラ金でも、「年収による制限」を受けずに融資を受けることが可能です。事業のために借りるので、審査の対象は「その事業の業績」になってきます。当然、一定の期間、継続して事業を行っていることもチェックされますし、経営が健全に行われているかも厳しくチェックが入ります。しかし、それをクリアできれば、個人で借り入れるよりも大きな金額を、場合によっては優遇金利で借り入れることも夢ではありません。

個人事業主のみなさんは、事業費も含めた融資を受けるか、個人の生計費だけに絞って借り入れをするか、いろいろな商品をじっくり検討して、経営者ならではの利点を十分活かした融資を受けられるように策を練りましょう。

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